第1回 研究推進体「ストレス」フォーラムを開催しました
第1回研究推進体「ストレス」フォーラムが、2010年6月15日(火)に基礎研究棟1階カンファレンスルームにおいて、40人程度の研究者が集まって開催されました。本フォーラムは、医学系研究科の若手研究者6人よって、ストレス応答の中でもタンパク質恒常性とその恒常性維持機構に関与する熱ショック応答に焦点を当てて、基盤的研究から疾患への応用研究までの幅広い視点からの研究を紹介していただきました。
熱ショック転写因子HSF1によるタンパク質恒常性維持は熱ショックタンパク質が担うことが知られていますが、医化学分野の林田先生には、それとは別の新しい経路がタンパク質ホメオスタシスに重要であることを示しました。耳鼻咽喉科学の菅原先生は、HSF1欠損により熱ショックタンパク質(Hsp)の発現低下が老人性難聴を引き起こすこと、高次脳機能病態学の内田先生は、HSF1欠損マウスがうつ様行動を示すことを明らかにされました。さらに、器官病態外科学の久保先生は、HSF1が骨髄幹細胞を介した虚血組織での血管再生に関与すること示しました。熱ショック応答はがんの発生や維持にも重要であることが明らかにされつつあります。皮膚科学の中村先生は、メラノーマ細胞のHSF1ノックダウンにより細胞増殖が阻止されることを示しました。消化器・腫瘍外科学の吉村先生は、Hspを利用した免疫療法で肝細胞がんが緩解するという驚くべき例を示されました。
各講演後には、活発な討論が行われました。各分野のスペシャリストがタンパク質恒常性と熱ショック応答の研究を推進することで、新たな発見が導かれ、さらなる発展が期待されると感じました。
(医化学分野 藤本充章)